一度読んだら忘れない激重女子と、周囲に頓着しない省エネ男子を描いた、1話完結型のマンガ『のあ先輩はともだち。』。
作者は、ビジネス百合アイドルを描いた『さよならじゃねーよ、ばか。』や、心優しき青年が殺人鬼になるまでを描く『きみに恋する殺人鬼』などを手がけた、あきやまえんま先生です。
『のあ先輩はともだち。』は、2023年から「週刊ヤングジャンプ」で連載しており、コミックスの連載累計発行部数は100万部を突破。*1 2026年7月にはアニメ化することが発表されました。
本記事では、『のあ先輩はともだち。』の何が読者を惹きつけるのか、その魅力を紹介します。
あらすじ:オフィスラブコメではない、オフィス“ともだち”コメディ
男女の友情は成立する
俺とのあ先輩がそうだから
定時をすぎ、人影がないオフィスで黙々と残業をする大塚理人。一段落つき帰ろうとすると、もうひとり残業をしている人物が。
それは、先輩の早乙女望愛でした。彼女はPCの画面を見つめながら、アルコール度数強めの缶酎ハイを片手に、大粒の涙をこぼしていました。
普段はクールなバリキャリを装っている彼女でしたが、実は情緒はメチャクチャ、会社では良い格好を見せようと頑張っていただけでした。
理人が彼女の話を聞いてみると、就業中の時間に彼氏に振られ、仕事どころではなかったのです。ミーティングでは何も話せず怒られる。醜態を後輩(理人)に晒して、今日は呪われた1日に。もう終わりだ。
一方的に感情を吐露し、子どものように涙を流すのあ先輩。それに対して理人はこのように声をかけます。
理人:早乙女さん、アートディレクターで多忙なのに、恋愛も本気でやってたってことですよね?それってすげーなと思って……
のあ先輩:…… え… いやそれは…あたしがただ恋愛脳なだけで…
理人:え… そうだとしても凄いですよ。恋愛するのも大変そうじゃないですか。俺なんか生活と趣味で手一杯ですし。でも早乙女さんは仕事も手を抜かないし…ホントどうやって生きてるんだろって…
のあ先輩:えっわかんない…ただ目の前に彼氏と仕事があるから…
気持ちが落ち着いたのあ先輩は、「また一緒に飲みに行かない…?」「いっそのこと友達にならない…?」と提案を持ちかけます。
一緒に飲んだり遊んだり、悩み相談したり、素でいられる関係。男とか女とかでもなく人として仲良し。それがのあ先輩にとっての友達です。
仕事以外は自分の時間を大事にしたい理人にとって、会社の先輩を友達にすることに抵抗がありました。しかし理人は、のあ先輩を人として尊敬していたことから提案を承諾。
のあ先輩の次なる依存先が決まった瞬間でした。
見どころ①:面倒臭さが癖になる限界バリキャリ女子
本作の主人公のひとりである早乙女望愛は、あるゲーム会社に務めて5年目のアートディレクター。看板ゲームのディレクションを務め、技術も高く手も早い。社内からは頼りにされる、バリバリのキャリアウーマンです。
しかし実際は一生懸命取り繕っているだけで、中身は情緒不安定な子どものような性格をしています。そのせいか、のあ先輩が本音を話せる人はほとんどいませんでした。
同期の中ではのあ先輩以外のグループができ、女性には嫌われやすい。男の人とは距離感がおかしくすぐにヘンな感じになってしまう。のあ先輩にとって理人は、身近でようやく見つけた理想の友人でした。
第1巻の「FILE.1. のあ先輩と“友達”」から子どもっぽさが露呈し、理人を困らせます。のあ先輩をのあ先輩たらしめているシーンがこれです。
のあ先輩:でね!昨日まで愛してる♡とかゆってたのに急に今日!!RINEで!!しかも仕事中にフッてきたの!!
理人:はい…
のあ先輩:好きな人ができたって…なんでぇ… ?お料理も毎日頑張ったしクレカも作ってあげたのに
理人:… え…
「とかゆってた」。「言ってた」ではなく「ゆってた」!のあ先輩はこういう人なのです!(?)
第2話からは、一緒に漫画喫茶や映画に行ったり、100件近くのメッセージがスマホに届いたり、のあ先輩は理人の生活を大きく変えていきます。
ちなみに、あきやまえんま先生はこのように語っており、作者の好みが存分に反映されたキャラクターになっています。
個人的に、のあ先輩のような重かわいい女の子は泣いている瞬間が最も可愛いと思っています。昔、のあ先輩みたいな女の子に虐められた際に小生が言い返したところ、泣きそうな顔をされました。その表情に興奮したんです。なので泣いているエピソードがついつい多くなってしまいます…。ごめんね、のあ先輩。
引用:週刊ヤングジャンプ新人漫画大賞スペシャルコンテンツ「あきやまえんま先生特別インタビュー」
見どころ②:省エネ至上主義の平熱さとり系男子
もうひとりの主人公が大塚理人。のあ先輩と同じゲーム会社に勤める、入社2年目のキャラクターモデラーです。
彼のモットーは省エネと定時退社。人間関係でもめるのはダルい。仕事で無理をするのも嫌だ。なぜなら疲れるから。仕事も人付き合いも最低限で、それよりも自分の時間を優先したいと考えつつも、
理人:まあこういう生き方…一生懸命生きている人には引かれそうだけど
と、若干の後ろめたさを感じているような描写もあります。
半ば強引にのあ先輩と友達になった理人は、自分のスタンスをブラすことはありません。のあ先輩からの鬼RLNEは通知オフ、飲み会の誘いに乗るのもたまにだけ。
のあ先輩:名前で呼んでいい!?理人ってゆーんだよねー。せっかく友達だし…
理人:嫌です。
のあ先輩:え!?え!?
理人:誰にも名前で呼ばれてないので嫌です(中略)
のあ先輩:理人くん 理人くん 理人くん 理人くん 理人くん 理人くん 理人くん 理人くん 理人くん 理人くん
これには理人も完敗。仕方なく名前呼びを承諾します。
のあ先輩いわく、理人は「男!!って感じがしない」「無性別?ニュートラル?」な存在。その雰囲気はブレることなく、のあ先輩のワガママをひたすら受け止めていきます。
見どころ③:男女の友情は成立する、を体現した物語
本作のテーマは男女の友情です。
同性の友達にはない、理人の声の低さや、のあ先輩の距離感の近さなどによって、お互いに心を揺さぶられることはあります。しかし、そこから関係が発展することはなく、ふたりの関係は友達でしかありません。
お互いの家に遊びに行ったり、泊まりに行ったり。仲の良い友達ならやって当然のことや、友達になって2ヵ月記念日を祝う会*2 まで、さまざまなことをして仲良くなっていきます。
順調に友人関係を続けるふたりでしたが、思わぬ「もしも」がのあ先輩を襲います。それは「もしも理人に彼女ができたら」。そうなれば、きっと理人はのあ先輩との時間を減らし、彼女との時間を優先させます。この後の展開はぜひ本編の第3巻でお楽しみください。
*2) 人間関係が2ヵ月続かないのあ先輩が一方的に開催。1ヵ月記念日は重いと考え自重した。
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本作が連載されているヤングジャンプでは、『こういうのがいい』『セーフセックス』『いとこのお姉ちゃんに甘えちゃう?』など、湿度高めのラブコメが支持されやすいです。
しかしそんな環境でも、全年齢が安心して読めるコメディマンガとして、読者に支持されています。
おそらく、キャラは重たいけれど、男女の関係に発展することはないヘルシーな展開が、読者に受けているのだと考えられます。
あきやま先生は『のあ先輩はともだち。』に関してこのように話しています。
——今までで印象に残っている(編集者との)打ち合わせはありますか?
あきやま:「ぼろぼろになるまで働いたサラリーマンが帰りの電車でも読める漫画を描いてほしい」という言葉がとても印象に残っています。
それまでは、漫画はドラマチックなものこそが面白く、価値があるものだと考えていましたが、人の心を癒やす漫画もとても大事なものなのだと勉強になりました。のあ先輩も、皆んな癒されてほしいなという気持ちで描いております!
引用:週刊ヤングジャンプ新人漫画大賞スペシャルコンテンツ「あきやまえんま先生特別インタビュー」
良く言えば、のあ先輩たちに癒される。はっきり言えば何も考えずにページをめくれる。そんな風に気軽に読める『のあ先輩はともだち。』をぜひ手に取ってみてください。
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