何度読み返しても発見があるマンガ『進撃の巨人』が面白い

全世界18言語・180ヵ国以上で出版され、全世界でのシリーズ累計発行部数が1億4000万部を突破*1 した『進撃の巨人』。講談社が出版する中では『金田一少年の事件簿』を抑えて、歴代1位の発行部数*2 を誇ります。

本記事では、『進撃の巨人』の何が人々を惹きつけるのか、その魅力を紹介します。

*1) 『進撃の巨人』公式ポータルサイト「書籍情報
*2) 漫画全巻ドットコム「歴代発行部数ランキング

あらすじ:天敵の巨人に母を食われ、自身も食われる主人公

100年以上前、突如として人類の前に巨人が出現。巨人と人類には圧倒的な力の差があり、人類は絶滅の危機を迎えます。

人類は高さ50mある3重の壁を築き、壁内での暮らしを選択。壁内の人々を残し、それ以外の人類は食い尽くされてしまいました。

エレン:一生壁の中から出られなくても……メシ食って寝てりゃ生きていけるよ…でも…それじゃ…まるで家畜じゃないか…

主人公のエレン・イェーガーの夢は、狭い壁内を飛び出して外の世界を探検すること。炎の水や氷の大地、砂の雪原、巨大な塩の湖が、外の世界には広がっていると信じていました。

ある日、エレンたちの目の前に超大型巨人が出現します。これまでに観測された巨人は最大でも15m。しかし50mを優に超える超大型巨人は壁の扉を蹴り壊し、平和だった壁内の環境を一変させます。続々と巨人が壁内に侵入し、エレンは巨人に食べられる母を食べる様子を、目の前で見ることしかできませんでした。

一匹残らず巨人を駆逐すると誓ったエレンは、5年後に兵士の道へ。訓練を終えたのもつかの間、再び超大型巨人が出現し、5年前の悪夢が蘇ります。今度は巨人を駆逐する術を身につけたエレンでしたが、コミックス第1巻であっけなく巨人に敗れてしまうのです。

見どころ①:巨人とは一体何なのか?

本作の面白さのひとつは、次々と明かされていく世界の謎を、登場人物とともに知っていく点です。

たとえば、謎の天敵・巨人に関して第1巻で分かっている情報は下記です。

  • 巨人には人間のような知性は確認できず、人間と意思の疎通はできない
  • 生殖器は存在せず繁殖方法は不明
  • ほとんどが男性のような体つき
  • その体は極端に高温
  • 人間以外の生物には一切の関心を示さない
  • 唯一の行動原理は人を食らうことだが、そもそも巨人が人間のいない環境下で100年以上存在していることを考えると、食事を摂ること自体必要ないと推測できる
  • 巨人が人類を食べる目的は、捕食ではなく、殺戮にあるのではないかとされている
  • 後頭部より下、うなじにかけての部分を大きく損傷すると絶命する
  • それ以外の場所が損傷しても、1〜2分ほどで元通りになる

しかし第1巻では、超大型巨人のように壁を壊すことを目的として出現・消失する個体や、鎧のような硬い組織をまとって壁に突撃する個体が登場しました。意図をもって人類へ攻撃をする、つまり知性を持った巨人の登場です。

なぜ巨人に個体差があるのか。なぜうなじ部分を損傷すると絶命するのか。なぜ人間だけを食べるのか。その謎が次々と明かされ、人類は巨人の正体に迫っていきます。

巨人は主に「無垢の巨人」と、特殊な能力と知性を持つ「九つの巨人」に分かれます。エレンの母やエレンを食べた巨人は無垢の巨人であり、超大型巨人や鎧の巨人は九つの巨人です。九つの巨人は、始祖ユミルの死後、9つの力に分割されてその能力が継承されました。先代の巨人の持ち主を捕食することで、その能力が引き継がれます。

当該部分に巨人の本体である人間が入っているため。物語後半には、うなじを攻撃しても死なない巨人も登場します。

巨人が人間を食べる理由は本編では直接明かされていませんが、9つの巨人を食べると、人間に戻れることが関係しているとされています。「無垢の巨人」は一度巨人になったらもとの姿には戻れませんが、「9つの巨人」の能力を持っている者を食べたときだけ、人間に戻ることができます。それを巨人の本能として知っている説が有力です。

見どころ②:人類の敵は何?——巨人殺害事件発生

エレンが所属する調査兵団は、壁外調査の最中、2体の巨人を生きたまま捕獲することに成功します。

彼らの名前はソニーとビーン。4m級のソニーは内気な性格で、日光を遮断すると元気がなくなります。7m級のビーンは大きな口が特徴で元気いっぱい。巨人に対する調査を進めるため、貴重なサンプルとして厳重に管理されていました。

しかし、2体ともうなじを切られる事件が勃発。ソニーとビーンは骸と化します。巨人を手にかけたものの目的は、恨みか、それとも——。

君には何が見える?敵は何だと思う?

調査兵団の団長であるエルヴィンは、エレンにこう問いかけます。巨人の駆逐を願い、調査兵団に入ったエレンでしたが、何が敵か分からなくなってしまいます。巨人を一匹残らず駆逐すれば自由を手に入れられると信じていたのに、さらなる暗雲が立ち込めるのです。

人類の敵は言ってしまえば世界でした。

超大型巨人や鎧の巨人は、壁の向こうの世界から派遣された戦士です。彼らの故郷の人々もまた、さまざまな脅威にさらされていました。壁を破壊し、壁内の人類を攻撃した鎧の巨人たちは加害者でもあり、被害者でもあったのです。

ちなみに、作者である諫山創先生の好きなキャラクターは、ライナー。

——『進撃の巨人』で諫山先生が一番好きなキャラクターは誰ですか? また、その理由も教えてください。

諫山先生:その時々によって僕の好きなキャラクターは変わるのですが、今はライナーが一番好きです。ライナーは僕自身の反省を担うキャラクターなんです。

どういう意味かというと、ライナーが『進撃の巨人』という世界の中の「加害者」であるように、僕もライナーと同じく漫画の中でキャラクター達を酷い目に遭わせている「加害者」なんですよね。なので、とても共感しながら描いています(笑)。

引用:イラスト・マンガ描き方ナビ「【人気漫画家に聞く】諫山創先生、連載までの軌跡&キャラクター術

主人公の母を巨人に食べさせ、エレンたちを死地に送り、自ら生み出した登場人物を容赦なく葬る。数え切れないほどひどいことをしている先生は、自身を加害者と称します。

見どころ③:人類が辿った歴史は真実か?

壁外の巨人領域に挑む調査兵団に所属する人々には、それぞれのモチベーションがあります。

エレンは母の敵である巨人を一匹残らず駆逐するため。幼馴染みのミカサはエレンを守るため。同じく幼馴染みのアルミンは海を見るため。

そしてエルヴィン団長は、自身の疑問を晴らすため。幼少期にエルヴィンが歴史の授業を受けているときに、ある疑問が浮かびます。それは、壁外に人類が存在しないとどうやって調べたのか?

歴史書には、「絶滅したと考えられる」ではなく、「壁外人類は絶滅した」と断定して書いてあり、エルヴィンはそこに作為的な匂いを嗅ぎ取ります。

筆者も本作を読み始めた頃、「巨人が発生してから、大規模な3重の壁を建設する余裕が果たしてあるのか?」と不思議に思っており、エルヴィンたちが真実に迫る様子に心を踊らせていました。

なぜ、100年以上前の歴史に関する記述がほとんど残っていないのか。仮に嘘の歴史が伝承されたとして、誰にどんな利益があるのか。のちに明かされることになります。

壁内人類が学んできた歴史は、王家によって改ざんされたものでした。

エレンたちエルディア人の先祖はもともと、壁が築かれたパラディ島ではなく、大陸に住んでいました。知性のある巨人を持つ家同士の争いが、大規模な内戦へと発展し「巨人大戦」が勃発。

戦争に嫌気が差した王は、一部のエルディア人を引き連れて、大陸からパラディ島へ避難します。もう戦争をしたくない。外部から侵攻をされるなら、エルディア人の罪それを甘んじて受け入れる。

そんな王の記憶が、巨人の力を通じて子孫にも継承され、壁の中でかりそめの平和を享受するために、壁内人類の記憶を操作。壁の外に人類が存在していることすら、歴史から消し去ったのです。

物語のフェーズ、登場人物の立場によって善悪がひっくり返る面白さを『進撃の巨人』で

本作では、1巻から最終34巻に至るまで、人対巨人、巨人対巨人、人対人の争いを徹底的に描いています。最後まで読み終えたとき、誰が悪なのか分からなくなる不思議な感覚に陥るはずです。

現代でも、得体のしれない最高指導者が近海にミサイルを落としたり、大国の大統領が「自国を守るため」と主張し隣国に侵攻したりする国があります。

歴史的には、日本はアジア諸国を占領統治し、被害を受けている大東亜を助ける “解放者” の自認があった一方で、欧米諸国から日本は “侵略者” や “加害者” として扱われていました。

一方から悪だと思われている人や国にも大義があり、立場が変われば英雄扱いされる、というのは実世界でも起こる普遍的な事象です。

そんな正義と悪の境界線が分からなくなる世界を描いたのが『進撃の巨人』です。ひとつの壮大な歴史のような、神話のような物語が展開される本作を、ぜひ読んでみてください。

サムネイル画像:Freepik – Magnific.com

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