【感想・レビュー】『1/11 じゅういちぶんのいち』という傑作【ネタバレ有り】

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誰にでも、一生手放したくない本やマンガがあると思うのですが、『じゅういちぶんのいち』という作品は、ぼくにとってそういう存在です。

 

キャプテン翼、ジャイアントキリング、アオアシなどサッカーマンガはたくさんありますが、本作は他のサッカーマンガとはまるで違う作品で、試合や練習のシーンはわずかしかなく、熱狂的なサッカー好きにとっては物足りない作品かもしれません。

 

しかしながら、主人公と彼を取り巻く登場人物たちが織りなす数々のドラマは、ぼくたち読者の心を何度も揺さぶってくれます。

あらすじ

自分の才能に限界を感じ、中学卒業と共にサッカーを辞めた安藤ソラ。しかし、女子日本代表・若宮四季との出会いが、心の奥底に眠っていた何かを衝き動かした。清新な筆致で描かれる、ソラを巡る様々な人間模様

出所:中村尚儁『じゅういちぶんのいち』第1巻

 

じゅういちぶんのいち』というタイトルは、主人公である安藤ソラがサッカーをするときに大切にしている考えで、サッカーは一人でするものではなく、チームの1/11としていかにチームに貢献するかが重要である、という哲学を彼は持っています。

 

本作はサッカーを題材にしたマンガではあるのですが、サッカーの技術や戦術的な話は少なく、どちらかといえばヒューマンドラマがメインの作品です。

 

学校行事の話や、彼女の両親と会う話、スカウトマンの話や、スポーツライターの話など、安藤ソラに関わる様々な人との物語が、一話完結という形で収録されています。

 

作者である中村先生は、サッカー未経験者で見るのは大好きらしいのですが、取材をたくさん重ね本作を描きあげたそうです。

 

そのため、サッカー未経験者でも楽しめる内容になっていますし、もちろん経験者にとっても楽しめる完成度の高さになっています。

出所:中村尚儁『じゅういちぶんのいち』第6巻

 

ぼくはサッカー経験者ですが、『じゅういちぶんのいち』というタイトルやその内容からも、サッカーの本質がわかった上で作者は描いているということがひしひしと伝わりました。

 

特に面白い話

神崎真臣


出所:中村尚儁『じゅういちぶんのいち』第2巻

 

プロのGK(ゴールキーパー)であるが、スタメンではない2ndGKの神崎真臣の話。

 

サッカーをやっていた人にはわかると思うのですが、GKというポジションはあまり人気のあるポジションではありません。

 

GKをやりたくてサッカーを始めた、という人をぼくは見たことがありません。

 

ゴールを守る最後の砦として重要なポジションではあるのですが、華やかさは無く責任重大なため、フィールドプレイヤー(GK以外のポジション)を選ぶ人が圧倒的に多いです。

 

そんなマニアックなポジションであるGKの話なのですが、『じゅういちぶんのいち』ファンの中では、圧倒的に支持されている話です。

 

GKというポジションの偉大さ、サブとしてのあり方、2ndGKの妻としてのあり方など、身に沁みるシーンがたくさんある中、息子の授業参観のシーンはグッときました。

 

フィールドプレーヤーとは違い、魅力が伝わりづらいポジションながらも、GKの素晴らしさが息子にも伝わっていたのは、普通に泣きました。

 

津吉四季

出所:中村尚儁『じゅういちぶんのいち』第5巻

 

1巻から最終巻にかけて登場してくる、主人公にとって心の支えとなっている、津吉四季という女子サッカー選手の話。

 

じゅういちぶんのいち』という作品は、亡くなってしまった四季ちゃんの意志を、主人公が継いでいく物語でもあり、四季ちゃんは色々な話で登場してきます。

 

1話から登場してきて、読書の心を持っていくのですが。最も心打たれたのは5巻の15・16話で、幼少期の安藤ソラと津吉四季の話です。

 

1話の伏線回収という形で、二人の出会いと別れが描かれていて、好きすぎるが故に幼いながらもソラと別れる決断をするという大人な話でした。

 

篠森仁菜


出所:中村尚儁『じゅういちぶんのいち』第9巻

 

ソラの所属する高校のサッカー部のマネージャーをしていて、ソラに密かに想いを寄せている篠森仁菜の話。

 

「安藤ソラと誰か」という話の構成が本作は基本なのですが、度々登場してくる本作のメインヒロインで、個人的に最も好きな登場人物です。

 

1巻に「篠森仁菜」というタイトルの話をして、最終巻に「安藤仁菜」という話を持ってくる作者のセンスがおしゃれすぎて、最終巻のタイトル見ただけで泣きました。

 

連載中ずっと二人の馴れ初めはいつ分かるんだと、ヤキモキしていましたが、最終巻に持ってくるとは思いませんでした。

 

7巻で結婚式の話があるのですが、これも面白いし、バージンロードのシーンは感動的でした。

 

とにかく最高なので、読んで欲しいです。

 

まとめ:サッカーが嫌いではない人全てに読んで欲しい

じゅういちぶんのいち』は、サッカーなんて知らない、スポーツマンガはあんまり好きじゃないという方でも楽しめる、異色のサッカーマンガです。

 

毎話泣けるのですが、9巻で完結してしまった時、もう新しい話は読めないんだと思って、寂しすぎて泣くくらいぼくはこの作品が好きです。

 

”強い意志”を持ってサッカーをやり続けること・・・それがサッカーが上手くなる唯一の方法だよ

本作は上記のような名言も多く、辛くなった時やモチベーションを上げたいときに何度も読み返しています。

 

ソラの純粋に夢を追う姿、ソラを通して成長していく仲間たちなど、勇気付けられる話ばかりです。

 

一生ぼくの本棚にあり続ける作品で、これからも何度も読み返すでしょう。

 

サッカーが嫌いじゃなければ、おそらく楽しめる作品なので、是非1巻からでも手にとってみてください。

 

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